関門航路について


所属船舶

 関門航路事務所には、現在6隻の船舶が所属しています。

ドラグサクション浚渫兼油回収船「海翔丸(かいしょうまる)」

●海翔丸の性能

海翔丸は日本最大級の最新鋭浚渫兼油回収船です。海底の土砂をさらって、船の通る道である航路を整備する浚渫と、事故などで海に流れ出た油を取り除く油回収の2つの重要な仕事をします。平成12年11月(2000年)に九州地方整備局関門航路事務所に配備されました。美しい海の環境と、航行する船の安全を守るとても重要な船なのです。

海翔丸写真

船体部

総トン数   4,659グロストン
全長   103メートル
  17.4メートル
深さ   7.2メートル
計画満載喫水   5.7メートル
最大速力   13.3ノット
航行区域   近海区域(国際)

機関部

主機関   2,648kVA×2台
補機関   400kVA×1台
非常用機関   70kW×1台
主発電機   2,400kVA×2台
補発電機   350kVA×2台
非常用発電機   55kVA×2台
推進器       360度旋回式 4翼固定ピッチ

      ノズル付プロペラ×2軸

浚渫装置部

浚渫方式 アフトセンタードラグ式
浚渫ポンプ 5,000立方メートル毎時間×2台
泥艙扉 底開き式×6枚
浚渫深度 -7~-18メートル
ジェットポンプ 500立方メートル毎時間×2台
リサイクルポンプ 2500立方メートル毎時間×2台
ドラグヘッド幅 6.5m
泥艙容量 2,000立方メートル

油回収装置部

油回収器

〔舷側設置式〕 シクロネ200型

 500立方メートル毎時間×2台

 油水吸引ポンプ

 一軸ネジ式 250立方メートル毎時間×4台  

〔投げ込み式〕 トランスレック200型、
 200立方メートル毎時間×2台

回収油水槽容量   1,500立方メートル
  • 島根県沖浮遊油回収作業平成27年1月6日から8日
  • 海翔丸災害緊急支援物資輸送活動

●自動係船及び自動陸上排送システム

開発の概要

大型浚渫兼油回収船「海翔丸」は現在24時間運航で、関門航路の浚渫作業に従事しており、浚渫した土砂は新門司沖土砂処分場に土捨てしています。しかし、処分場内の埋立が進行してきたことに伴い「海翔丸」の土捨て方式を直接投入方式から陸上排送方式に切替える必要が生じました。このため、平成16年4月(2004年)から「操船~接岸~陸上排送~離岸」をコンピュータ制御で自動化する、世界初の「自動係船・自動陸上排送システム」の運用を開始しました。

      自動係船開発概要

自動係船及び自動陸上排送システム

係船開始係船完了

アプローチ

①桟橋手前800m付近より自動操船を開始し、アプローチ予定航路を通っていきます。
②桟橋手前40mの付近で桟橋に対して平行にします。

係船手順

①本線は桟橋に対して平行にゆっくりと近づきます。
②桟橋からアームを伸ばし、吸着盤を本船に押し当て吸着を行います。
③吸着後アームを引き込み、ワイヤーロープで本船を防舷材まで引き込みます。
④係船後、装置のオートテンション機構により自動的に本線の位置保持を行います。
また、吸着盤・防舷材は本船の喫水・潮位変化に応じて自動的に追従します。

 

●浚渫(しゅんせつ)について

浚渫作業ができる条件

浚渫速力 3~5ノット(対地速度)
風速 15メートル毎秒以下
波高 1.5メートル以下

浚渫速力では大人がジョギングするくらいの速度、風速は木全体が揺れて人が立つのが困難なくらいの風、波高は小さな船が航海できないほどの高さです。

浚渫する場所を知るシステム

人工衛星の発信する電波をとらえて、現在の位置を測定するGPSというシステムがあります。(最近ではカーナビでも使用されています。)
このGPSを使って、現在位置を確認しながら、目的の浚渫場所に向かいます。

浚渫する深さについて

海の水深は潮の満ち引きによって変化します。
このため、まず、船底から超音波を出して、海底までの深さを測ります。
次に、潮の満ち引きによる潮位と、船の喫水を計算することで、一定の水深で浚渫ができるようになっています。

潮位:潮の満ち引きで変化する海面の高さ
水深:基本水準面からの深さ
喫水:船が水に浮かんでいる時の船底から水面までの距離

海翔丸の浚渫方法と優た浚渫技術

船体の後ろにある「ドラグヘッド」を海底に降ろし、海底に掃除機をかけるように、2台の浚渫ポンプを使って土砂と海水を吸い込んで掘り下げていきます。海水といっしょに土砂を吸い込むことにより、パイプ内を通る土砂の目詰まりを起こしにくくします。
海翔丸が特に優れている点は、浚渫する時の船の速度や、浚渫ポンプ、リサイクルポンプなどの浚渫機器の運転を、コンピュータと数多くのパソコンでファジー制御していることです。
これにより、操舵室にある浚渫操作盤のモニターを監視しながら、常に最適な浚渫をおこなうことができます。

海翔丸写真

吸い上げた土砂と海水

吸い上げた土砂と海水は、いったん泥艙に貯められます。
泥艙の容量は2,000立方メートルです。
泥艙に貯まった海水は、リサイクルポンプでドラグヘッドに戻し、再び海底の土砂の吸い込みに利用します。

なぜ一度吸い上げた海水をドラグヘッドに戻すのか

浚渫では海底の土砂を海水と一緒に吸い込むため、ドラグヘッドに泥艙内の上澄海水を戻すことで余分な海水を吸い込むことなく、泥艙により多くの土砂を貯めることができるので、浚渫作業の効率が上がり、海を汚すこともありません。

浚渫できる土砂の量

浚渫1回30分程度で、1,200~1,500立方メートル、浚渫場所から土捨て場所までの距離にもよりますが、1日に8,000~10,000立方メートル(25メートルプールおよそ25杯分)浚渫できます。
泥艙が一杯になったら土砂処分場に運んで、埋立等に有効利用しています。

一杯になった泥艙内の土砂の排出方法について

海翔丸は、土砂処分場に到着すると直接中に入り、 船底にある6枚の扉を開け、数分間で土砂を降ろします。
泥艙扉を開けても、船体の両サイドにある回収油タンクが浮力タンクになっているので、船が沈むことはありません。
また、直接土砂処分場の中へ入れなくなると、船側の舷外排送管と陸上の排送管をつなぎ、浚渫ポンプで土砂処分場まで圧送します。舷外排送装置による土砂の処分時間は、排送距離にもよりますが、船の接岸から管の接続などの準備を含めて、概ね1時間程度です。

●油回収について

油回収作業ができる条件

舷側設置式
潮流 1~3ノット以下
波高 4.0メートル(最大波高)
投げ込み式
潮流 1ノット以下
波高 1.6メートル(最大波高)

舷側設置式油回収器は、最大波高4.0メートルの荒波という悪条件でも油回収作業が可能です。

「舷側設置式油回収器」と「投げ込み式油回収器」の2種類を使います。

●「舷側設置式油回収器」

海翔丸写真

「舷側設置式油回収器」は、波の衝撃に強く、さらさらした油(低粘度)の回収に適しており、船の動きからサイクロン室内に渦流が発生し、流入した油水を海水と油に遠心分離させ、分離した油を油回収ポンプで船内の回収油タンクへ送ります。
1時間あたり最大1,000キロリットル(25メートルプールおよそ2.5杯分)の油を回収することが可能です。

●「投げ込み式油回収器」

「投げ込み式油回収器」

「投込み式油回収器」は、比較的波がおだやかな状態で、広範囲に広がった粘りのある油(高粘度)を回収するのに適しています。
回収にあたって、船の中央部両サイドにある水ジェット式集油装置により油を集め、回収器に付いているポンプで油を船内の回収油タンクへ送ります。
1時間あたり最大400キロリットル(25メートルプールおよそ1杯分)の油を回収することが可能です。

回収した油の処理

投げ込み式油回収器を使用する時は、水ジェット式集油装置により、幅広く効率的に油を回収できます。
舷側設置式油回収器は、冬の日本海の荒波でも油回収が可能な設計になっています。

海面油もれ状況 油回収状況
海面油もれ状況

清掃兼油回収船「がんりゅう」

海洋環境整備事業を実施しているがんりゅうは、海面を浮遊する流木やゴミを回収清掃する機能と、浮遊油を回収防除する機能を兼ね備えた船で、平成12年3月(2000年)に就航しました。
清掃担当海域としては、西は響灘海域から東は周防灘海域まで3,500平方キロメートルの海域を担務しています。

がんりゅうの写真

主要目
全長 32.30メートル
全幅 11.60メートル
深さ 3.8メートル
喫水 2.00メートル
総トン数 195トン
速力 13.96ノット
主機関 1,468馬力×2基
航行区域 沿海
ゴミ回収装置
回収方式 スキッパー方式(6立方メートル×1個)
塵芥コンテナ コンテナ8立方メートル×4個
選別台 4枚台左右移動式
多関節クレーン 中折式0.99トン×1基
グラブ掴み径φ50~800ミリメートル
チェーンソー有効切断径φ450ミリメートル

   スキッパー

   スキッパー1 スキッパー2

   多関節クレーン

   多関節クレーン チェンソー

油回収装置
油回収器 浮遊堰式直接吸引ポンプ
(25立方メートル毎時間)
油水分離槽
移送ポンプ 1台(22立方メートル毎時間)
回収油水槽 10立方メートル×2個
放水銃 2台(1,000リットル毎分以上)
ジブクレーン 0.95トン×1基

   油回収装置

       

  1. 海面にスキッパーを昇降させてゴミを回収するスキッパー方式の採用、ポッパに投入する前に選別台を設置し稚魚が住み着く藻等を海に戻すなどの環境に考慮した設計となっています。
  2. 多関節クレーンの採用により流木等の直接回収が、安全かつ、容易におこなえます。
  3. 油回収作業をおこなう際には操舵室より遠隔操作が可能なため安全に作業をおこなうことができ、さらさらした油から粘りのある油まで効率よく回収が可能となっています。

測量船「海燕」

海燕は、関門航路を計画的に浚渫整備するための水深の測定と、航行船舶の安全を確保するための水深の管理をおこなうため、平成28年(2016年)に最新鋭の高速・高精度測量船として就航しました。

海燕の写真
海燕の測量イメージ
 
  1. アルミ合金の双胴船のため軽量で安定性が高く、測量地点まで迅速(巡航速度27ノット:時速約50キロメートル)移動することができます。また、高速(最大15ノット:時速約27キロメートル)で移動しながら測量を行うことができます。
  2. 高精度測位システム:人工衛星からの電波を利用した測位システム(RTK-GNSS)を使用して、船体の位置を正確に求めること(誤差は水平方向・鉛直方向ともに5cm以下)ができます。
  3. 動揺補正システム:ピッチング(縦揺れ)、ローリング(横揺れ)等の船体動揺を探知し補正処理することにより、より高い精度で水深測定を行うことができます。
  4. 潮位補正システム:各測量エリア毎に決められた潮位局から無線伝送された潮位をリアルタイムで受信し、水深値を補正しています。
  5. 水深の測定は、船底に設置された2基の送受波器から海底に向かって扇状に発射される超音波を送受信して行います。(最大探査水深は200m)通常は、速力10ノットで航行し、振幅90°で音波を送受信して水深の約2倍の幅を探査しています。通常時の探査能力は、1分間で約9,200㎡、テニスコート約35面分の面積(水深13mの場合)に相当します。

航路調査船「鎮西」

 通常時には終日航路内をパトロールしています。航路内で異常が発見された時には、状況を把握するため現場に急行し、二次災害が起こらないように対応します。

    

  

船 体 部

全長 22.0メートル
4.5メートル
深さ 2.4メートル
喫水 1.0メートル
総トン数 39トン
航行速力 32.8ノット
航行区域 沿海区域(限定)

機 関 部     

主機関 916馬力×2基

主 要 設 備     

高性能音響測深機 水深を図り、海底面の地形を三次元にて表示
有索式水中航行艇(ROV) 海中・海底の状況を映像で表示
映像伝達装置 鎮西の監視カメラの映像を関門航路事務所へ配信
電光表示装置 最大256文字のメッセージを表示。日本語・英語に対応
前方障害物監視装置 海底にある障害物を表示

港湾業務艇「あみかぜ」

 現場への移動や監督などに使用される船です。

       
あみかぜ

   

港湾業務艇「たちかぜ」

 現場への移動や監督などに使用される船です。

     tatikaze
たちかぜ